はじめに
VCや金融機関との投資面談やオーディエンスを引き込むようなピッチや審査員との質疑応答についてアドバイスします。おさえるべきポイントや質問事項、その回答方法をレクチャーします。
ポイント
新しい価値を創造するために「何が何でも実現したい」「何が何でもこれをやりたい」という強い想いと他を圧倒する行動力をオーディエンスに感じさせることが重要です。例えば「事業がスケールする速度が、技術革新より速いかどうか?」「消費者がこのサービスを利用するに怖さを感じないか?」「すでにありそうなサービスですが、なぜ今まで誰もやれなかったのか?」「既存のサービスはどの程度調査しましたか?」などの良くある質問にも即座にロジカルに打ち返せる情報武装も必要です。
ピッチトレーニングはメンタリング時に個別に行いますので希望者は連絡ください。
上手いと言われるピッチ5原則
目の前に投資家相手がいることを想定して語り掛ける様なピッチを!
投資家に刺さるのは目の前の投資家に語り掛けるスタイルです。そうすることで魅力あふれるプレゼンテーションになります。
ビジュアルを多用する!
投資家を惹きつける方法としては、動画>写真>図解・グラフ>音声>大文字>小文字 の順でアピール力の差があります。文字だけでなくビジネスモデルを目に見える形で見せられれば、最も効果的に投資家にメッセージを伝えることができます。
フォントサイズは 「最低 20pt 以上」
フォントが小さいと、投資家は文字を読むことに集中し、スピーカーの声が耳に入りません。
結果として、投資家の印象に残りません。推奨は 24pt 以上です。
スライドは 「 16:9 」のワイドサイズ
「16:9 」の方が画面上で大きく表示され、投資家から読まれやすくなります。
スライド枚数推奨は 「 1スライド30秒」
1スライド30 秒程度でゆっくり話すと投資家に自信のある印象を与え、メッセージが伝わります。
※ボリュームですが5分のピッチだと5ページから10ページを目安にてください。
※カラーは黒・赤・青の3色をべース、テキストは黒、赤、白抜を推奨します。
※ページ構成は図解やグラフが75%、テキストが25%がみやすい目安。
ピッチでの8つの審査ポイント
企業価値の最大化を実現するために投資家の心を動かすキーワードは下記になります。
『業界初』『日本初』『日本制覇』
ユニコーンを狙うのであれば『世界初』『世界制覇』=イノベーティブなビジネスモデル
このビジネスが大きく化けることを示唆することが重要です。
①ビジョンミッションバリュー(夢・原体験・社会性・クレド)
②人的資源/経営チーム力(成功要因:バックグランド、ハードシングス、受賞歴、メディア紹介、採用戦略など)
③参入市場規模(TAM・SAM・SOM、市場成長率、ベンチマーク、法的規制)
④課題と解決策(ストーリー性や時代感を重視、不平・不満、プロダクトの説明)
⑤競合優位性(強み、革新性、新規性、差別化、カスタマーサクセス)
⑥ビジネスモデル(儲かる仕組み=収益構造、ヒトモノカネの流れ、料金プラン、マーケティング、参入障壁)
⑦トラクション(KPI予想か実績、売上計画=PL、初期集客、契約企業名、ユーザーインタビュー結果)
⑧事業計画(成長戦略全般、成長スピードとスケール感について中長期経営戦略)
⑨資金使途(調達した資金の使途について)
⑩アフターコロナでの優位性(例:DX、コスト削減、非接触、ホームステイ)
※ピッチイベントで資金調達の具体的な金額や時期を明記して不特定多数に向けて発信すると金融商品取引法上の有価証券の「募集」に該当してしまう可能性があり、金融庁に無届けでこのピッチすると金商法違反になる恐れがあります。投資家との個別面談での資料に明記するのは問題ないです。
特にスライドはトークをメインにできるようにテキスト文字を減らし、図解や写真、イラストを多用してプロダクトの素晴らしさが直観的にわかりやすいように編集してください。
2021年のバスワードは下記です。
『DX』『SaaS』『アフターコロナ』『リモートワーク』『デリバリー』『オンラインレッスン』『5G』
動画の効果と神動画
動画は1分間がベストです。30秒が2本もOKです。
ピッチ5分、動画1分、合計6分が基本です。
動画は審査員やオーディエンスの評価を上げる為にはマストになります。
UIとUXが分かりやすくプロダクトの内容が理解できる内容がベストです。
オーディエンスに共感共鳴してもらうと紹介案件が増えます。
プロダクトを利用する場面(ユースケース、ビフォーアフター)や使い方(操作デモ)を2回に分けて30秒ずつ製作出来るとベストです。
下記の4社の神動画を参考にして制作をお願いします。
※vimeoに無料会員登録してください
トークの速さやリズムは名作ピッチの宮田社長を手本にしてください。
台本の重要性について
自分のピッチのトークをスマホのボイスレコーダーで録音し、言葉のテンポや間の置き方などを神動画と比べてください。社員に聞いてもらい評価してもらうのも有効です。先日宮田社長と話をしましたが台本を何度も作り直して100回以上練習したそうです。
滑舌の悪い方はボイストレーニングをおすすめします。YouTubeでたくさんあります。
コツはワードで一言一句違わない台本を作成することです。
宮田社長は毎回時間を計算して修正したそうです。5分間だと文字カウントの文字数で1300文字前後の台本に仕上げるのがベストです。
ピッチの必須ポイントは5つ
1.解決しようとしている深刻な問題は何か?
2.なぜユーザーはお金を払ってでもその問題を解決したいと思うのか?
3.このビジネスにより問題解決がうまくいくという根拠は何か?
4.エグジット時の企業価値とそれまでに資金調達はいくら必要か?その使途は?
5.具体的な数字は七難を隠しますが、何か強い数字はありますか?
「何が何でも実現したい」「何が何でもこれをやりたい」という強い想いと、他を圧倒する行動力を投資家に感じさせることが重要 、つまりピッチでは数値計画よりもビッグピクチャーが重要。
ピッチ資料の基本フォーマットと並び
ロゴ:印象に残るように社名ロゴとキャッチコピーを全ぺージの右上に記載。
表紙 :社名とキャッチコピー(ひと目で事業内容がわかるワード)
※表紙には何が業界初、日本初、世界初なのかを誰でもわかるように記載する。
【並びと内容】
①ビジョンミッションバリュー
夢・原体験・社会性・クレドについて文章でなく図解やキーワードで記載。
②人的資源/経営チーム力
事業の成功要因、実現性を高める根拠になるような全取締役の顔写真とバックグランド(年齢、卒業校、前職、受賞歴、アクセラ採択歴、メディア紹介歴)やハードシングスについて簡潔に記載。成長を加速させるコア人材の存在やピボット歴(事業の変遷と売上利益との相関を説明)など。
③参入市場規模
TAM・SAM・SOM:現状の業界統計データなど参考。出所が無い場合は「自社調べ」で可。
競合環境 (ベンチマーク、マッピングとポジショニング)
市場成長率、市場の細分化分析(STP分析)など。
法的規制の見解:弁護士の意見書など。
④課題と解決策
プロダクトやサービスの説明、文章でなく図解やキーワードで記載。
課題から解決策に至るまでのストーリー性、明確な深刻な不平・不満、時代感について
⑤競合優位性
自社のプロダクトやサービスの強みを簡潔に記載:他社では出来ない最大の差別化ポイント
競合他社の競合比較表:コストメリットの比較と説明など(〇、×、△など)
革新性、新規性、カスタマーサクセス
知的財産権や大手との契約内容、参入障壁、既存顧客の活用状況とエンゲージメントなど。
⑥ビジネスモデル
儲かる仕組み=商取引形態(BtoB,BtoC,BtoBtoCなど)
料金プラン=収益性
マネタイズポイント(ヒトモノカネの流れ)
※文章でなく図解やキーワードで記載
⑦トラクション
KPIの推移と見込み:登録ID数、課金ID数、導入社数、ARR、MRR、解約率(12ヶ月平均値)、ARPU、DAU、DL数、PV,CVR,客単価など。
ユーザーインタビュー結果のアンケートレポート
導入実績(社名)と実験検証結果、顧客からの改善要望など。
⑧事業計画
売上計画:創業からの業績推移と5年後までの見込み 売上、経常利益、販管費
市場参入計画:初期集客、市場への認知、販路拡大方法、セールス手法、情報取得方法、アップセル、クロスセルの方向性、品質の担保、顧客のリスクテイクなど。
マーケティング戦略(商品戦略、価格戦略、広告戦略、販路戦略)とカスタマーサクセス
中長期経営戦略:現在の状況から5年10年後の会社の姿を投資家が成長スピードとスケール感がイメージできるように図解やグラフを活用してビジュアル化。
成長戦略:横展開や海外展開など、上場までのロードマップや今後のビジネス領域の拡大について
開発ロードマップや協業ニーズ
⑨アフターコロナでの優位性
アフターコロナに向けて、いかにこのビジネスが優れているか、次世代のパンデミックに打ち勝てるかを解説。
1.ビジョン、ミッション(経営理念、起業の動機など)
2.事業内容
3.事業提携ニーズ
4.資金調達ニーズとその資金使途
5.出身校,前職
6.経営者のコミットメント力とバックグランドの魅力、経営メンバーの特徴
7.ビジネスモデル(サービス内容)のイノベイティブな点とマネタイズモデル、課金体系について
8.どんなターゲットユーザーに対して、どんな潜在的な深刻な課題を、どう解決するのかを明確
9.ターゲット市場規模と市場のポテンシャルについて
10.その領域でリーディングカンパニーになりえる最大の強み、競合類似会社名と明確な差別優位性、競合分析、新規性について
11.プロダクトマーケットフィットに到達できていますか?できている場合はその根拠、まだ到達していない場合は今後の検証方法
12.現在のプロダクト(サービス)の開発進捗と、ニーズが検証されてる状況にあるかどうか
13.マネタイズポイントについて
14.事業計画達成のためのKPIと、伸びているKPIについて、ユニットエコノミクスの達成について
15.見込みより伸びていないKPIとその対策について
16.直近2年間の売上と営業利益の実績、同じく今後5年間の売上と営業利益の計画
17.主要取引先と各売上シェア
18.出願中も含めて知的財産などをお持ちの権利、免許関係について
19.大企業とのアライアンスやオープンイノベーションの実績や予定
20.海外展開している場合はその内容と実績、今後予定がある場合はその内容
21.今後の成長戦略について
22.ローンチした時期もしくは予定日
23.払い込み希望月日
24.今回のエクイティ調達予定金額
25.今回のプレバリュエーション金額(潜在株含む)、前回のポストバリュエーション金額(潜在株含む)
26.顕在株数(議決権あり)、顕在株数(議決権なし)、オプションプール株数
27.調達資金の資金使途について
28.リード投資家名
29.現時点でのCEOの持ち株比率
30.現時点での株主構成について株主名とシェア、リードVC、またアドバイザリー、顧問名
31.現時点での出資者候補と金額、その出資確度について
32.現時点での資金調達ラウンド
33.現時点での調達ステージ
34.上場時かM&A時の売上、経常利益、純利益、想定PER、上場会社の類似業種の社名5社とそのPER
35.前期のBSに記載されている純資産
36.前月末の現預金
37.今後半年間のバーンレートの推移や見込みについて
38.月次試算表の作成体制と所要期間
39.デットファイナンスの実績や予定
40.監査法人、主幹事証券、株主名簿管理人との契約状況
41.IPOやM&Aなど出口戦略について目標時期や金額
42.出資が決まった後はどのようなサポートを要望
解決策よりも、自分がどんな深刻な課題を解決しようとしているか=問題意識がもっとも重要。自分たちが解決しようとしている問題に困っている人、悩んでいる人、欲求不満の人がどれだけいるか、今はまだ小さな売上でも、自分たちのサービスがどれだけその問題や課題を解決して顧客を幸せにしているか=顧客満足、つまりそのストーリーを伝えることが非常に重要です。
質問の定番
差別化、収益性、成長性、組織体制、国際性、実現可能性。
投資家の質問のベースになる代表的なフレームワーク
①4P(価格、商品サービス、広告、販路)
②4C(Customer Value:顧客にとっての価値、Cost to the Customer:顧客の負担、Convenience:入手の容易性、Communication:コミュニケーション)
③3C(Customer:市場と顧客分析、Competitor:競合分析、Company:自社分析)
④PEST分析(Politics:規制や法改正、Economy:物価、消費動向、成長率、Society:少子高齢化、人口構成,Technology:IT化、イノベーション、新技術)
⑤ファイブフォース(新規参入者、代替え品の脅威、競争関係、供給企業の交渉力、買い手の交渉力)
⑥VRIO分析(Value:経済価値、Rarity:希少性、Inimitability:模倣困難性、Organization:組織)
⑦SWOTスウォット分析(Strengths:自社の持つ強み,Weaknesses:自社の持つ弱み,Opportunities:機会,Threats:脅威)についてです。
①一般的な質問
②差別化についての質問
③収益性についての質問
④成長性についての質問
⑤組織体制、経営チームについての質問
⑥国際性についての質問
⑦実現可能性についての質問
⑧資金調達について
⑨SaaSモデルについて
下記のうちでどの手法を活用しますか?
1.パラレルマーケティング
2.PR
3.規格外PR(バズコンテンツ、顧客優待など)
4.SEM(サーチエンジンマーケティング/SEO+リスティング広告)
5.ソーシャル/ディスプレイ広告
6.オフライン広告
7.SEO
8.コンテンツマーケティング
9.メールマーケティング
10.ITエンジニアリングの活用
11.ブログ広告
12.ビジネス開発(パートナーシップ構築)
13.営業
14.アフィリエイトプログラム
15.Webサイト、アプリストア、SNS
16.展示会
17.オフラインイベント
18.講演(ウェビナー等)
19.コミュニティ構築(エバンジェリストやアンバサダーを醸成または育成する)
20.ホワイトペーパー(資料の配布)
21.メディアやイベントでのインタビューや対談に応じる
22.メディアへの執筆や連載
23.書籍の出版